君はいつからノートの端に目を描かなくなったのだろうか。今一度残っているノート全てをひっくり返してみないか?いつの日か忘れてしまったクリスマスの日のツリーの下にプレゼントが置いてあるワクワクを、給食で揚げパンが出た日の高揚感を取り戻すために。
私は一冊目のノートを開く。
中身を見た感じ、簡単な漢字の羅列。漢字練習ノートであると推測できるため、おそらく二、三年生の時のノートであろう。さて、いつから目を書いているのだろうか。
おぉ…この頃の私には際限などなかったのだろう。目だけで収めることなく、小さな子供のわんぱくさ、そして自由さがこの絵に溢れ出ている。特にマッキーペンで書いちゃうの流石すぎ。カッケェよ。
これは良い発見だ。あの頃確かに私は自由だった。男女の境なく「今日一緒に校庭でかくれんぼしよう」だとか、初めて出会った同じ年代の子供に話しかける時は、「友達になろう」と語りかけ友人を作った。
いつのまにか「友達になろう」なんて言わずにいつのまにか仲良く友達をしている。私はどうやって友達を作ったのだろうか、と悩んでいた。作り方など忘れたのだと思っていた。否、小さな頃の作り方は忘れていなかったのに、それを「流石に高校生なんだし笑」で目を背けていただけなんだ。
あぁ、恥ずかしい。己が恥ずかしい。誰か殴ってくれ。親に甘え、己に甘え、友人の優しさに甘え、世界に甘えている私を。誰でもいい。殴って目覚めさせてくれ…。
私は罪の意識に苛まれつつ二冊目のノートを開く
あぁ、少し年齢が飛んだな。字が先ほどと比べ物にならないほど上手になっている。頑張ったんだね…。成長に少し涙しつつも絵が描かれているページを探す。
ふむ…絵も成長している気がする…だって横顔描いてるし...。でも二、三年生の頃より無邪気さを感じない…そうか、君は世界を知ってしまったんだ。だから絵を全力でノートに書くと叱られると理解してしまったから少し小さめに書いて消しやすいようにしているんだな?
私は悲しいよ。君という美しさが失われるのが。
失われないでくれ、その輝きを…私は三冊目のノートを開く。
さぁ、輝きを探そう。失われていないだろうか、私は不安で仕方がない。
ボーカロイド曲「いーあるふぁんくらぶ」の歌詞
あ、あぁ…輝きは暗闇(厨二病)に堕ちてしまったか…。あぁ、もう見たくない。苦しいよ。
本来の趣旨から外れていることはわかっている。それでも、悔しいものは悔しい。
いや、本題に戻ろう。絵を探そう。
あったあった。絵を描いているね。しかも目だ。この頃から目だけを書いているのか。
絵が上手くなってて嬉しいな。頑張ったんだね。この頃の君の絵を全力で褒めてくれる人なんていなかっただろう。(いたとしても全肯定bot図工教師)だから今生きて、今までの君の絵を見てきた私が褒めよう。すごく上手だ。しっかりと考えて考えて作り出したんだね。素晴らしい。あまりにもファビュラス。美しい。今私は君を全力で褒めちぎり抱きしめ、そしてでっけぇ模造紙に一緒に絵を描きたい。消しゴムがかけづらいあのツルツルとした模造紙に、夢を描こう。一緒に。君の今の夢を教えてくれ…夢を見ることを禁じられつつある私に!君の溌剌とした笑顔で私を溶かしてくれ。
四冊目に移ろう。
さてと、年齢が上がっているから尚更目だけを書くことが多くなっているんじゃないか?
授業のノートの挿絵もあった
なに?
目だ。見つけた。やっぱり成長してイキリ始めるからか、最初の方のページにあった。中学生になってなおずっと絵を描き続けている君を私は誇りに思うよ。そのままずっと続けてくれ、そんなこと言っている私はもう、ノートの端に絵を描くことをしていないのだがな。
五冊目に移ろう
私はページを開きパラパラとページをめくった。
………(パラっ)
………………(パラパラッ)
ない。
ないぞ。ここからか…君が絵を描かなくなったのは!大体字から予想がつく。高校1年生だね。君。そうか、君は高校生から描かなくなったんだね。でも理由は理解(わか)るよ。お絵描き帳に絵を描けばいいことを理解したからだろう。かくいう私もそうだからである。
なんかスッゲェ悲しいような、成長を感じて嬉しいような。あぁ、不思議な気持ちである。
しかしこれでわかった。ノートの端っこに目を書いていたはずの君は、高校生でいなくなってしまったんだね。
なんだか、虚しい気分だ…。それでも人生は進む。私も進んでいこう...。
エンド
P.S.いっぱいノート探したから部屋が荒れ果てたからこれから片付けなきゃ行けないのが結構嫌